漫画家・芦原妃名子さんの死去とドラマ制作のトラブル
連載中の漫画のドラマ化に原作者が反発
2024年1月29日、漫画家の芦原妃名子さん(50)が栃木県内で死亡しているのが発見されました。
遺書のようなものも見つかっており、自殺とみられています。
芦原さんは小学館の姉系プチコミックで連載中の『セクシー田中さん』などで知られる人気漫画家でした。
『セクシー田中さん』は、30代の独身女性・田中朱里が、同じ会社のイケメン後輩・小西進吾との恋愛を通して自分の人生を見つめ直す物語です。
この作品は2023年10月から12月にかけて日本テレビでドラマ化されました。
しかし、このドラマ化にあたって、原作者の芦原さんと制作サイドの間には大きなトラブルがあったことが明らかになっています。
芦原さんは自身のX(Twitter)アカウントで、ドラマ化の話に同意した際には「必ず漫画に忠実に」するという条件を提示したと説明しています。
また、原作漫画が未完結であることから、ドラマの終盤は自分があらすじやセリフを用意し、脚本に変更を加えないことを希望したとも述べています。
しかし、実際には漫画と大きく異なるプロットや脚本が提出され、芦原さんは何度も加筆修正を行ったという。
特に、ドラマの最終2話は、当初担当していた脚本家の相沢友子さんが外され、芦原さん自身が書くことになりました。
芦原さんはこの経緯について「私が9話、10話の脚本を書かざるをえないと判断した」とX(Twitter)で明かしています。
しかし、この投稿は後に削除され、代わりに「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」というコメントが残されました。
その後、芦原さんは行方不明になり、死亡が確認されました。
漫画原作ドラマの増殖とその問題点
サブスク時代のコンテンツ戦略とクリエイターの敬意の欠如
芦原さんの死去は、漫画原作ドラマの制作現場における問題を浮き彫りにしました。
近年、テレビ各局のドラマ枠は増え続けており、その多くが漫画や小説などの原作物に依存しています。
その背景には、サブスクリプションサービスの台頭と広告収入の減少があります。
テレビ局は自社のサブスクサービスにコンテンツを流し込むために、ドラマを量産する必要があります。
その際、ドラマは報道番組やバラエティ番組と違って、過去の作品も再利用できるというメリットがあります。
出演者や原作者の人気によっては、特集や再放送などで視聴者を引きつけることができます。
しかし、このようなコンテンツ戦略は、ドラマのクオリティやオリジナリティに影響を与えています。
予算や時間が限られた中で、既に人気のある原作物をドラマ化する方が、リスクが少なく、効率が良いという判断がされています。
その結果、原作物の取り合いや、連載中の作品の早期のドラマ化などが起こっています。
また、ドラマ化にあたっては、原作のファンの反応や視聴率の獲得などを考慮して、原作とは異なる展開やキャラクターに変更することもあります。
これによって、原作者や原作のファンとの間に溝が生まれることも少なくありません。
さらに、ドラマの脚本家や演出家などの育成も十分ではなく、クリエイターの敬意や尊重が欠けているという指摘もあります。
原作とドラマのバランスとコミュニケーションの重要性
漫画原作ドラマの問題点について、映画会社の社長たちもコメントしています。
東映の岡田裕介社長は「原作のすばらしさを生かすことが大前提」としながらも、「映像化するということは、原作とは違うものになるということも理解してもらわないといけない」と述べました。
東宝の宮内正喜社長は「原作のファンの方々の期待に応えることは大事だが、それだけではなく、映像としての面白さも追求しないといけない」と語りました。
一方、松竹の高橋敏弘社長は「原作者の方とのコミュニケーションが大事だと思う」と強調しました。
高橋社長は、自社が製作した『鬼滅の刃』の映画化について、原作者の吾峠呼世晴さんとのやりとりを次のように紹介しました。
「吾峠先生は、映画の脚本や絵コンテにも目を通してくださり、ご意見やご感想をお寄せくださりました。
その中で、特に印象に残っているのは、無限列車編のラストシーンについてです。
吾峠先生は、煉獄杏寿郎の死に際して、炭治郎たちが号泣するシーンを見て、涙を流されたとおっしゃっていました。
そして、そのシーンについて、『私はこういう風に描きたかったんです。 これが私の理想です』とお褒めいただきました。
それは私たちにとって、とても嬉しい言葉でした。 吾峠先生の想いを映像にすることができたと感じました」。
高橋社長は、原作者とのコミュニケーションが映画の成功に大きく貢献したと語りました。
「吾峠先生は、映画の制作に関して、とても信頼してくださり、自由にやらせてくださりました。
そのおかげで、私たちは自信を持って映画を作ることができました。
吾峠先生は、映画の完成後も、SNSやインタビューなどで、映画を絶賛してくださり、ファンの方々にも見ていただくように呼びかけてくださりました。
そのおかげで、映画は大ヒットしました。 吾峠先生には、心から感謝しています」。
このように、原作とドラマのバランスとコミュニケーションの重要性を、『鬼滅の刃』の映画化の事例から見ることができます。
原作の魅力を尊重しつつ、映像としての面白さを追求することが、ドラマの成功の秘訣であると言えるでしょう。
また、原作者と制作サイドの信頼関係や協力関係が、ドラマの品質や人気にも大きく影響することがわかります。
原作とドラマのバランスとコミュニケーションの重要性を忘れずに、今後も素晴らしいドラマが作られることを期待しています。
まとめ
漫画家・芦原妃名子さんが自ら命を絶った背景にある漫画原作ドラマの問題点について、本記事では詳しく解説しています。
芦原さんは、自身の代表作『セクシー田中さん』のドラマ化に際して、制作サイドとのトラブルに悩まされ、最終的に自殺に追い込まれました。
この事件は、漫画原作ドラマの制作現場における、サブスク時代のコンテンツ戦略とクリエイターの敬意の欠如という問題を浮き彫りにしました。
本記事では、漫画原作ドラマの成功事例として、『鬼滅の刃』の映画化における、原作者と制作サイドのバランスとコミュニケーションの重要性を紹介しています。
漫画原作ドラマは、原作の魅力を尊重しつつ、映像としての面白さを追求することが、ドラマの成功の秘訣であると言えるでしょう。
また、原作者と制作サイドの信頼関係や協力関係が、ドラマの品質や人気にも大きく影響することがわかります。