タイの自動車産業は、東南アジア最大の規模を誇り、世界でも有数の生産・輸出国です。
しかし、新型コロナウイルスの影響や環境規制の強化などにより、市場の変化に対応する必要があります。
その中で、タイ政府は、電気自動車(EV)の普及促進に力を入れており、多くの自動車メーカーや部品メーカーがEVの生産や投入に動いています。
タイは、EVの生産ハブとしての地位を確立できるのでしょうか。
この記事では、タイの自動車産業の現状とEVの動向について解説します。
タイの自動車産業の現状
タイは、2019年に2,013,710台の自動車を生産し、世界第11位の生産国でした。
タイの自動車生産の約半分はピックアップトラックであり、タイはピックアップトラックの世界最大の生産国です。
タイの自動車生産の約6割は輸出されており、タイの主要輸出品目の一つです。
タイの自動車産業は、日系の自動車メーカーが主力であり、トヨタ、ホンダ、日産、三菱、マツダ、スズキ、いすゞなどがタイに工場を持っています。
タイには、自動車メーカーだけでなく、部品メーカーやサプライヤーも多数集積しており、自動車産業はタイのGDPの約10%を占める重要な産業です。
しかし、タイの自動車産業は、新型コロナウイルスの感染拡大による需要減や供給不足、欧米や中国などの環境規制の強化やEVの普及などにより、大きな変化に直面しています。
2020年には、タイの自動車生産は前年比29.1%減の1,427,054台に落ち込み、2009年の金融危機以来の低水準になりました。
2021年には、新型コロナウイルスの第2波や第3波の影響で、自動車工場の一時停止や部品の不足などが発生し、自動車生産や販売の回復は遅れています。
タイの自動車産業は、これまでの内燃機関車に依存した生産体制から、EVに対応した生産体制への転換を迫られています。
タイのEVの動向
タイ政府は、EVの普及促進に向けたさまざまな施策を実施しており、2025年までにEVの生産台数を100万台、販売台数を30万台にするという目標を掲げています。
タイは、EVの開発において、特にピックアップトラックに注目しており、環境への負荷を減らすとともに、産業における利便性や競争力を高めると考えています。
タイ政府のEV推進策の主な内容は、以下のとおりです。
- EVおよび主要部品の製造、充電ステーション設置に対する投資優遇措置(法人税免除、機械輸入税免除など)
- BEVに対する販売補助金、輸入税免除、物品税減免
- EV充電システム、電磁両立性、EV用バッテリーや充電ステーションの決済システム用DCメーターにかかる基準の策定
- 自動車試験・認証センター、バッテリー試験センターの開設
- EVバッテリーの最終処理計画の策定準備、最終処理管理に関する法律の制定
- 奨励企業が人材育成に投資する場合、追加的な法人税の減免あり
これらの施策により、タイには多くの自動車メーカーや部品メーカーがEVの生産や投入に動いています。
例えば、以下のような動きがあります。
- いすゞ自動車は、2025年以降、タイでピックアップトラックのEVを生産し、欧州に導入すると発表した。
- トヨタ自動車は、ピックアップトラックのEVを2023年にもタイで生産する方針を明らかにした。
- グレートウォールモーターは、タイでピックアップトラックのEVを生産する計画を発表し、米ゼネラルモーターズ(GM)の工場を買収することで合意した。
- テスラは、タイでのピックアップトラックのEVの販売を検討していると報じられている。
- タイ石油公社(PTT)と台湾のFoxconnは、EV生産プラットフォームの開発を目指して、合弁企業を設立した。
タイのEV市場は、まだ小規模であり、2020年のEV登録台数は約2万台にすぎません。
そのうち、BEVは約3,000台で、市場の15%を占めるに過ぎません。
しかし、タイ政府や自動車メーカーの取り組みによって、今後も成長が見込まれます。
タイは、EVの生産ハブとしての地位を確立できるでしょうか。
- タイは東南アジア最大の自動車生産国であり、電気自動車の開発にも力を入れている
- タイ政府は電気自動車の普及促進に向けたさまざまな施策を実施している
- タイの電気自動車市場は今後も成長が見込まれるが、製造・生産面に課題もある
タイは東南アジア最大の自動車生産国であり、電気自動車の開発にも力を入れている
タイは東南アジアで最も自動車産業が発達した国であり、2022年には200万台以上の自動車を生産し、世界第11位の自動車生産国となりました。
タイの自動車産業は、日本や欧米の自動車メーカーが進出し、現地での生産や部品供給を行ってきたことで成長しました。
タイは、日本の自動車メーカーの中でも特にトヨタやホンダの重要な生産拠点となっており、タイ国内の自動車販売の約8割を占めています。
タイは、自動車産業の将来に向けて、電気自動車(EV)の開発にも積極的に取り組んでいます。
タイは、2020年にEVタイランド2020という政策を発表し、2025年までにEVの生産台数を100万台、販売台数を30万台にするという目標を掲げました。
タイは、EVの開発において、特にピックアップトラックに注目しています。
ピックアップトラックは、タイの自動車市場で最も人気のある車種であり、2022年には全体の約4割を占めました。
タイは、ピックアップトラックのEV化によって、環境への負荷を減らすとともに、農業や商業などの産業における利便性や競争力を高めると考えています。
タイ政府は電気自動車の普及促進に向けたさまざまな施策を実施している
タイ政府は、電気自動車の普及促進に向けて、税制や規制、インフラなどの面でさまざまな施策を実施しています。
具体的には、以下のような取り組みがあります。
税制面では、
EVの生産や輸入に対して、従来の自動車に比べて低い税率を適用しています。
例えば、EVの生産に対する法人税は2%、輸入に対する関税は「0%」となっています。
また、EVの購入者に対しても、従来の自動車に比べて低い登録税や所有税を適用しています。
規制面では、
EVの安全性や性能に関する基準や認証制度を整備しています。
例えば、EVのバッテリーに関する基準や、EVの充電器に関する認証制度を設けています。
また、EVの充電に関する規制も緩和しています。
例えば、EVの充電ステーションの設置や運営に関する許可や手続きを簡素化しています。
インフラ面では、
EVの充電ステーションの整備や拡充を支援しています。
例えば、政府機関や公共施設にEVの充電ステーションを設置することを義務付けています。
また、民間企業や地方自治体と協力して、EVの充電ステーションのネットワークを構築しています。
タイの電気自動車市場は今後も成長が見込まれるが、製造・生産面に課題もある
タイの電気自動車市場は、政府の施策や自動車メーカーの投資によって、今後も成長が見込まれます。
タイのEVの販売台数は、2022年には約2万台でしたが、2025年には約10万台になると予測されています。
タイのEVの市場シェアは、2022年には約1%でしたが、2025年には約5%になると予測されています。
しかし、タイの電気自動車産業には、製造・生産面においても課題があります。
その一つは、EVの部品や素材の国内供給が不十分であることです。
タイは、EVの主要な部品であるバッテリーやモーターなどの製造や開発において、日本や中国などの先進国に比べて遅れています。
タイは、EVの部品や素材の輸入に依存しており、コストや品質に影響を受けやすいです。
タイは、EVの部品や素材の国内生産や技術開発を促進するために、政府や産業界と連携して、人材育成や研究開発などの支援を行う必要があります。
もう一つの課題は、EVの需要や消費者の意識が低いことです。
タイの自動車市場は、従来のガソリン車やディーゼル車が圧倒的に多く、EVに対する知識や関心が低いです。
タイの消費者は、EVの価格や性能、充電の利便性などに対して、不安や疑問を抱いています。
タイは、EVの需要や消費者の意識を高めるために、政府や自動車メーカーが協力して、EVの価格や性能の改善や、EVの利点やメリットの啓発や教育などの取り組みを行う必要があります。
タイで人気の高いピックアップトラックの特徴と電気自動車化の動向
- ピックアップトラックはタイの自動車市場で高いシェアを持ち、荷台や税金、ファッション性が魅力
- ピックアップトラックの電気自動車化は進んでおり、国内外のメーカーが新型車を投入している
- ピックアップトラックの電気自動車化には、インフラ整備やコスト削減などの課題もある
ピックアップトラックはタイの自動車市場で高いシェアを持ち、荷台や税金、ファッション性が魅力
タイでは、ピックアップトラックは自動車市場の約4割を占めるほど人気があります。
その理由は、さまざまな用途に対応できる荷台や、商用車としての税金の優遇、若者にも受け入れられるファッション性などにあります。
ピックアップトラックの荷台は、農業や商業などの仕事に使うだけでなく、家族や友人とのレジャーや旅行にも便利です。
荷台にテントやテーブル、椅子などを積んでキャンプに行ったり、バイクやサーフボードなどの趣味の道具を運んだりできます。
また、荷台にはボルト穴が設けられており、ボルトとナットで架装部と簡単に締結できるようになっています。
これにより、移動販売車やアウトドア志向モデルなど、自分の好みに合わせたカスタマイズが楽しめます。
ピックアップトラックは、商用車としての税金の優遇も魅力の一つです。
タイでは、商用車には登録税や所有税がかからないか、または低い税率で適用されます。
例えば、登録税は商用車には0%、自家用車には10%が課せられます。
このため、ピックアップトラックは自家用車よりも購入しやすく、経済的にも有利です。
ピックアップトラックは、若者にも受け入れられるファッション性も持っています。
タイでは、ピックアップトラックに対する憧れやステータス感があり、ファミリーカーとしても人気があります。
また、ピックアップトラックは、悪路に強い走行性能や高い安全性を備えており、道路事情の悪い地方でも安心して運転できます。
さらに、ピックアップトラックは、多様なグレードや架装が用意されており、自分の好みやライフスタイルに合わせて選ぶことができます。
ピックアップトラックの電気自動車化は進んでおり、国内外のメーカーが新型車を投入している
タイは、EVの開発において、特にピックアップトラックに注目しており、環境への負荷を減らすとともに、産業における利便性や競争力を高めると考えています。
タイの自動車メーカーは、ピックアップトラックのEV化に積極的に取り組んでいます。
いすゞ自動車は、2025年以降、タイでピックアップトラックのEVを生産し、欧州に導入すると発表しました。
いすゞは、欧州連合(EU)の環境規制強化を見据え、EVの需要拡大に備えるとともに、タイでの量産体制を整える予定です。
トヨタ自動車は、ピックアップトラックのEVを2023年にもタイで生産する方針を明らかにしました。
トヨタは、パタヤでの実証を予定しており、まずは公共交通機関での利用を想定しています。
タイの自動車メーカーだけでなく、海外の自動車メーカーも、タイのピックアップトラックのEV市場に参入しています。
中国の自動車メーカー、グレートウォールモーターは、タイでピックアップトラックのEVを生産する計画を発表しました。
グレートウォールモーターは、タイでのEV生産拠点として、米ゼネラルモーターズ(GM)の工場を買収することで合意しました。
また、米テスラも、タイでのピックアップトラックのEVの販売を検討していると報じられています。
テスラは、2022年に発売予定のピックアップトラック「サイバートラック」をタイで予約できるようにするという噂があります。
ピックアップトラックの電気自動車化には、インフラ整備やコスト削減などの課題もある
タイのピックアップトラックのEV市場は、政府や自動車メーカーの取り組みによって、今後も成長が見込まれます。
しかし、ピックアップトラックのEV化には、インフラ整備やコスト削減などの課題もあります。
インフラ整備の課題は、EVの充電ステーションの不足や分布の偏りです。
タイでは、EVの充電ステーションは約2000箇所しかありません。
また、充電ステーションのほとんどは、首都バンコクや工業団地のある東部地域に集中しており、北部や東北部などの農村地域にはほとんどありません。
これでは、ピックアップトラックの主なユーザーである農家や商人が、EVに乗り換えるのは難しいでしょう。
タイ政府は、EVの充電ステーションの整備や拡充を支援していますが、まだまだ不十分な状況です。
コスト削減の課題は、EVの価格が高いことです。
タイでは、EVの価格は従来の自動車に比べて約2倍ほど高く、一般の消費者にとっては手が届きにくいものです。
EVの価格を高くする要因の一つは、バッテリーのコストです。
タイでは、バッテリーの製造や開発において、日本や中国などの先進国に比べて遅れており、バッテリーの輸入に依存しています。
これにより、為替や関税などの影響を受けやすく、価格が上昇しやすいです。
タイは、バッテリーの国内生産や技術開発を促進するために、政府や産業界と連携して、人材育成や研究開発などの支援を行う必要があります。
タイのピックアップトラックのEV市場は、今後も成長が見込まれますが、インフラ整備やコスト削減などの課題を克服するためには、政府や自動車メーカー、消費者などの関係者が協力して、EVの普及促進に取り組む必要があります。
タイは、ピックアップトラックのEV化によって、環境や経済の両面での利益を享受できると期待されます。
まとめ
タイの自動車産業と電気自動車の現状と展望を紹介
- タイは東南アジア最大の自動車生産国であり、電気自動車の開発にも力を入れている
- タイ政府は電気自動車の普及促進に向けたさまざまな施策を実施している
- タイの電気自動車市場は今後も成長が見込まれるが、製造・生産面に課題もある
ピックアップトラックの人気と需要の理由と傾向を分析
- ピックアップトラックはタイの自動車市場で高いシェアを持ち、荷台や税金、ファッション性が魅力
- ピックアップトラックは多様な用途に対応できるカスタマイズ性や走行性能を備えている
- ピックアップトラックは若者や農家などの幅広い層に受け入れられるファミリーカーとしても人気がある
ピックアップトラックの電気自動車化には、メリットとデメリットがある
- ピックアップトラックの電気自動車化は環境や経済の両面での利益をもたらす
- ピックアップトラックの電気自動車化は国内外のメーカーが新型車を投入している
- ピックアップトラックの電気自動車化にはインフラ整備やコスト削減などの課題を克服する必要がある
以上が、タイの自動車産業と電気自動車の今後の展望~ピックアップトラックの人気と需要の理由と傾向~の記事のまとめです。
タイの自動車産業と電気自動車に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。